高木 寛 の時事放談

  第218号 令和3年3月1日

 
時事短編
二・二六事件
 この号を書き始めて急に昭和11年2月26日の「2・26事件」を思い出しました。
 まさにこの日、私一家は長野県の上田から千葉県市川へ引っ越しのため信越線の列車に乗っていたところ、何の連絡もなくいきなり群馬県の横川駅で一晩放置されたのです。これが「二・二六事件」で、私が小学校三年生10才の時のことでした。
 翌日漸く動いた汽車で終点の上野駅に着きますと、膝の下まで真っ白に積もった雪の出入り口には「剣付き(ケンツキ)鉄砲」に身を固めた兵隊がズラリと整列、怪しいと思われた人はすぐ尋問される風景が見られました。 
 グーグルで確かめますと、これは1500名ほどの歩兵連隊が高橋是清、斉藤実等の重臣4人などを殺害したクーデターで、後日軍法会議で首謀の将校19名が死刑を宣告された事件でした。昭和11年のこの事件に次いで、昭和12年から支那事変、16年から第二次大戦、20年終戦とめまぐるしく続く乱世になったのです。       
素人から玄人へ
大統領選挙と新政府

 米国の選挙は大がかりでバイデンの大統領が決まるまでに長い時間がかかりました。
 大統領が反対党の民主党から出たので閣僚や各省高官が大幅に変わるのは当然です。トランプ政権では大統領以下政府の高官までズブの素人が多かったようですが、今回は「政治の専門家集団」で“海ニ千年、山ニ千年”の実務家揃い、引継ぎは順調に進んだと思われます。但しバイデンは今年78才、どこまで体力が続くかが問題です。
 215号で述べましたが、民主党は「アンチ・ジャパン」の傾向が強く、戦後の民主党 大統領の時代はどうもしっくりしませんでした。しかしバイデン氏は大統領当選前に“「尖閣諸島は日本の領地で、犯そうとするものがあれば、米国は日本と協力して守る」”と明言し、今までの民主党大統領とは多少違うところを見せています。
経歴
 暗殺されたケネデイーやカーター、クリントン、オバマなど民主党の大統領を思い出しますと、みな冷たい感じの“アンチ・ジャパン”の姿が浮かびます。 
 ジョウ・バイデン氏は弁護士で上院議員に当選以来50年の議員経験があり、オバマ大統領の下で副大統領も務めました。その際日韓で暗礁に乗り上げていた「慰安婦問題」で仲介役を務め、解決に力を貸してくれたことで我が国では知られた人物です。
バイデンの電話:「四面皆敵」
 韓国人と言うのはつまらないことに気を遣う人種で、文はバイデン大統領からの電話が我が菅総理への電話の翌日くらいにある筈だと思い込み、待てど暮らせど呼ばれません。そこで中国の習近平に電話してお世辞を使つたところ一週間以上たって漸く来たバイデンの電話は誠に素っ気ないものだったようです。文は自分がこしらえた
「四面皆敵」の環境に気がつかない不思議な人物と言えるでしょう。 
 話がチト逸れます。ご存じと思いますが、韓国で文の執権当時から四年間「外務大臣」を勤めた康京和と言う女性は元来英語の通訳で外交官の経験はなく、文に気に入られて外相になったとのことです。ところが北鮮金正恩総書記の妹金与正が“韓国の外相が気に入らん”と言ったとかで、文は康を首にしました。広い世界には“外国人の意見一つで自分の国の大臣の首をスゲ変える大統領がいる”のに驚きます。
北鮮対策
 バイデン大統領が韓国との間にまずぶつかる「問題点」は“北鮮”です。トランプは米国と北鮮との仲介役として文を使おうとはしませんでしたが、北鮮そのものを「敵」として扱うこともしませんでした。
 しかし北鮮を敵視していると思われるバイデンが「米国との軍事演習の内容を事前に北鮮に漏らす」ような文大統領にどう応対するかは見物(ミモノ)です。
ロシアはソ連
ソ連の崩壊と復活

 70年程続いた「ソビエト連邦」が瓦解し、後にロシア連邦共和国が出来てから既に30年が経ちました。そしてその大統領は1991年からエリツィン、2000年からプーチン、2008年からメドベジェフ、2012年からプーチンの時代となっています。しかし何かの事情で 一時他人に称号を貸しましたが、実質的には2000年から20年間プーチンがロシアに君臨していると言っても良いでしょう。そしてその政治は旧ソ連と似通ったものになりつつあります。
 2014年ロシア軍は何の前触れもなくウクライナ領のクリミア半島を占拠し、自国領土に編入してしまいましたが、これは明らかに旧ソ連流のやり方です。
ロシアは欧州の国か?
 
NATO(北大西洋条約機構)は米国の主導の下に戦後ソ連を仮想敵国としてヨーロッパ諸国が作った防御組織です。ソ連は地理的には欧州の国であるにも拘わらず、欧州国家からは常に仮想敵国と見られています。ロシアが欧州と繋がっているところと言えば、有り余る「天然ガス」をパイプで欧州諸国へ供給していることぐらいではないでしょうか?
我が国とロシア
 ロシアは帝政であろうが、共産主義であろうが、民主国家であろうが、我が国と友好的な関係にあったことは一度もありません。
 ソ連は第二次大戦時我が国と不可侵条約を結びながら敗戦と見るや北方四島を占領し、満州駐留中の我が軍兵士と民間人六十万人を拉致、労働させ六万人を死亡させた国です。
 北方四島については我が歴代内閣がプーチンと永年返還交渉をしていますが彼は言を左右にして妥結せず、国民には四島とも還すつもりは無いと公言しています。
 こんな事で安倍内閣の後期から我が国とロシアの間は大分冷え込んでおり、従来我が国がロシアから輸入していた原油やガスの量も近頃減って、その分米国産品が増えています。
ダモイとノルマ
 話が逸れます。ソ連に拉致された我が国民が“今日も暮れゆく異国の丘に~~~”と歌ったのはこの時のことで、「
ノルマ=強制された労働量」「ダモイ=帰国」と言うロシア語が流行りました。悲しい終戦後の物語です。
ロシアの規模
 ロシアの国土面積は世界一ですが、人口は145百万人と我が国より少し多い程度、1人当たりのGDPは4万ドルを超える我が国と比べて遙かに低い1万1千ドルに過ぎません。
 それにしてもこの勘定高い貧乏国が四島は還すつもりもないのに、“お世辞笑いを浮かべながら”樺太周辺の「ガス開発」への参加や出資を促したり、ウラジオから北海道までの地下鉄を持ちかけたりするのは我が国に“金と技術とを出させて、果実は自分が取る”と言う下心がミエミエです。
沈み始めた韓国
文の戸惑い:反日判決:笑わせるな

 昨年末から韓国裁判所の「図に乗った反日判決」に見せる
「文の戸惑い」が続いていて、文は“韓国は三権分立の近代国家だから大統領でも裁判所の判決には手を出せない”などとバカなことを言っています。しかし彼が大統領就任早々最高裁判事の相当数を左派に入れ替えたことなどを考えると思わず“笑わせるな・・”とあきれてしまいます。
韓国の失業の質
 韓国の失業率が文在寅の大統領就任以来大幅に増えていると非難されていますが、その内容について韓国紙は触れようとはしません。しかし         
 第一に韓国失業者の相当部分は大学などの新卒者なのに日本では新卒者失業率は極めて低いのが大違いです。しかも文が大統領就任以来失業者は増える一方ではありませんか?
 第二に韓国には就職を諦めた者が相当いて、これらは失業者に算入されていませんが、日本にその種の「非失業者」は殆どいません。
共産主義の末路
 共産主義のソ連が消え、国際貿易については自由主義に近い政策を採っている中国とも違い、「人民共和国」と唱えていても北鮮は明らかに「金氏の封建国家」です。
 ところが文在寅はこれを百も承知していながら合邦目的で政治を進めています。しかし北鮮二代目の金正日の妹の夫の張成沢が三代目金正恩に「高射機関銃」で死刑にされたことから考えますと、文はせいぜい「旧式のピストル」で処刑されるのが落ちでしょう。
スワップ協定
 我が国と韓国との間に最高700億ドルあった「スワップ協定」の期限が完全に切れたのは2015年で、その後釜山の慰安婦人像設置事件で延長が成立せず、今日に到っています。
 韓国は昨年6月に期限の切れた米国からの・・・韓国ではスワップと言っていましたが実質的には借入金・・・6百億ドルの期限を更に一年延長しました。          
 しかし韓国は外貨準備金4千億ドルを正式に計上していますから6百億ドル程度の「ハシタ金」を借りる必要は全く無い筈です。また金(キン)の相場は毎日変わるのに、毎年同じ金額の「金」が資産に計上されているなど、不審の点が多く信用出来ません。
のたれ死に
 文大統領就任以来、「両国間既存の条約や申し合わせを無視した彼の行為」に対し安倍内閣や後継の菅内閣は融和的応対を全くせず、強硬に対処して来ました。従来の日本の「柔和なやり方」を予期していた文はこれに応対出来ず周章狼狽、残りの任期僅か一年、もう打つ手は無く、
“のたれ死に”するしかなくなっています。

           油壺から(107)
軍歌
七五調 
 軍歌と言うと拒絶反応を起こされる人があると思いますので、極く簡単に述べます。
 まず軍歌には「五七調」は決してありません。必ず七五調か七七調です。  
五七調とは各句が5字7字と言う組み合わせになっているもので、島崎藤村の「椰子の実」〝名も知らぬ(5字)遠き島より(7字)、流れよる(5字)椰子の実一つ(7字)〟
と5-7,5-7の構成になっている詩のことです。
 これに反して土井晩翠の「荒城の月」では
〝春高楼の(7字)花の宴(5字)、巡る杯(7字)影さして(5字)・・〟
と7-5,7-5の構成になっています。
 この理由は七五調が男性的で勇壮なのに対し、五七調が女性的で優しいためだと言われています。数多い軍歌の中で最も悲しいと言われる「戦友」でさえも
 〝ここはお国を(7)何百里(5)、離れて遠き(7)満州の(5)・・〟
と七五調になっています。
軍歌の種類
 〝見よ東海の空明けて、旭日高く輝けば、天地の正気溌剌と 希望は躍る大八洲・・〟
で始まる「愛国行進曲」は昭和12年に瀬戸口藤吉作詩し、藤川幸雄作曲の有名な歌ですが、これを軍歌と思っている人が多いのです。しかしこれは正式の軍歌ではなく、民間の行進曲です。
 陸海軍はそれぞれ隊内で歌う「軍歌」をもっています。
陸軍
 陸軍について言いますと、
 〝敵は幾万ありとても、すべて烏合の勢なるぞ、
  烏合の勢にあらずとも、味方に正しき正義あり〟
の「敵は幾万」などが正規の陸軍々歌で、
 〝徐州、徐州と人馬は進む、徐州いよいか住みよいか・・〟
で始まる「麦と兵隊」は民間の軍歌様流行歌とも言うべき歌です。
海軍
 海軍の正式軍歌はもっと特殊で、海軍で最も良く歌われていた
 〝如何に狂風吹きまくも、如何に怒濤は逆まくも、
  たとい敵艦多くとも、何恐れんや義勇の士〟
で始まる「如何に狂風」などは恐らく海軍にいた人しか知らないと思います。
 海軍と言えば誰でもすぐ口ずさむのは
 〝朝だ夜明けだ 潮の息吹、うんと吸い込むあかがね色の
  胸に若さのみなぎる誇り、海の男だ艦隊勤務
  月月火水木金金。〟
の「艦隊勤務」と言う歌は海軍の正式軍歌ではなく、「二種軍歌」と呼ばれていました