36期の入校式は昭和18年12月1日であった。新入生教育が終わると親切な上級生徒が一変して、怒鳴る殴るの鬼の厳しさになった。寒風吹き荒ぶ早朝「總短艇!」の非常呼集で勝鬨橋側のポンドに一目散。ダビットのローフを解きカッターを下ろす。12本のオールにしがみつき隅田川に漕ぎ出す。他の分隊よりも遅いと怒鳴られ殴られる。短艇訓練は海軍生徒として当然ながら烈しかった。
特に5月の分隊競技までは、早朝の總短艇と午後の訓育が一日おきに3号生徒を鍛えた。尻の皮が剥け掌の豆が破れても全く容赦はない。近藤教官の爪竿が飛んできたことも懐かしく思い出される。
分隊対抗競技となれば、12本の櫂が揃って水を捉えなければ艇に行き足がつかない。全員が心を一つにして漕ぐ。「櫂上げ〜、櫂立て〜。」全力を出し切って勝った時のよろこび・・・。
入校間もない3号の時から分隊競争のオールを握らせてもらった嬉しさが今も忘れられない。 |